巡航と弾道
2013-01-03


正月休みに、分厚いのでなかなか手をだすことができていなかった『ブラックアウト』(コニー・ウィリス著 大森望訳)を読んだ。第二次大戦中のイギリスを舞台にしたタイムトラベル小説で、750ページの厚さがありながら、物語はまだ前半という大長編である(後半『オールクリア』の翻訳は、まだ刊行されていない)

ドイツ軍のミサイル兵器「V1」による攻撃を、21世紀からの時間旅行者が観察するシーンがあるのだが、ちょっとひっかかった。
 飛行機じゃなくて、無人ロケットなのよ、とメアリは心の中でいった。到着が遅れたせいでV1以前の日常を観察できないんじゃないかという心配は杞憂だった- 彼らはいまだに"V1以前"を生きている。
時間旅行者・メアリの言は間違っている。V1はロケットエンジンではなく、パルスジェットエンジンである。ロケットエンジンを積んでいたのはV2だ。また、V1は巡航ミサイルであり、V2は弾道ミサイルである。巡航ミサイルというのは、つまり、翼による揚力を持って「飛ぶ」ものなので、物語中の「時代人」の考える「飛行機」という認識は間違いではない。じっさいV1は航空機のかたちをしている。

この違いが気になったのは、じつは、つい最近調べた折り紙のことにすこし関係している。『折紙探偵団』(2月末刊行137号)に、このブログでも触れた、紙飛行機の元祖・「紙の矢」について書いたのだが、これを調べる過程で、「紙の矢」には、翼の揚力を使って飛ぶものと、そうではない投げるものがありそうだということに気づいたのである。
[折り紙]
[もろもろ]

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