特別公開など - 本を読んでばかりのひと
2019-08-18


の登場人物だけでなく、作中のバイプレイヤーも「手塚式スターシステム」で手塚作品から「出演」しており、瀬名さんの手塚愛があふれていた。ピノコのちょっとマイナーなセリフもでてくるが、なぜか「あのセリフ」は取っておかれている。読むと、オリジナルの『ブラック・ジャック』も読みたくなる。本棚を見ると、うちにあったのは1975年(初版ではない)の「手塚治虫マンガ家生活30周年記念作品」と記されたものであった。

◆華文小説
評判の中国の小説二冊、SFの『三体』[LINK](劉慈欣著、立原透耶、光吉さくら、大森望訳)と、ミステリの『黄』[LINK](雷鈞著、稲村文吾訳)を読んだ。

電波望遠鏡がリアルな日常である観測所で働く者なので、『三体』の設定の諸々には、なんじゃそれとも思ったけれど、荒唐無稽さをたのしんだ。三体問題といえば、少し前このブログに、モリアティーの論文『小惑星の力学』のテーマは三体問題であろうということを書いた

『黄』は、ドイツ人の養子になった中国出身の主人公の名前が、ベンヤミン・ウィトシュタインということに、にやりとした。漢字では本傑明・維特施泰因で、ウィトゲンシュタインではなく、ウィトシュタインである。じっさいにWittesteinという姓があるのかどうかを調べたら、これはちゃんとあった。ミステリとしての大ネタとテーマの融合がすばらしく、島田荘司推理小説賞に相応しい物語であった。折紙探偵団コンベンションのゲストのうちのひとりが、中国からの黄(ホアン)さんで、この小説も現地での発音はホアンなのだろう、などと思った。黄さんは『名探偵コナン』が好きということだったので、現代華文ミステリも読んでいる可能性は高く、話題にすればよかった。

◆お酉さま
ちくま文庫の『落ち穂拾い・犬の生活』小山清)を読んでいて、『安い頭』のルビに、え?となった。鷲神社(おおとりじんじゃ)に「わしじんじゃ」というルビが振られていたのだ。全国各地にある「鷲神社」には、「わししんじゃ」と読むものもあるが、『安い頭』にでてくるのは、台東区千束にある、通称「お酉さま」の「おおとり神社」である。一葉の『たけくらべ』にも、大鳥神社、もしくは大鳥大明神として登場する神社で、あの社を「わしじんじゃ」と呼ぶのは聞いたことがない。「難読と思われる漢字にはルビを付しました」という編集での誤植だろう。


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