折紙歌合拾遺 紙雛篇
2018-10-28


(写真は、以下の文章と直接の関係はない)
禺画像]

あの言葉の真の意味に、耕助はそのときはじめて気がついたのである 。
『獄門島』横溝正史)

9月末に発行された『折紙探偵団』171号[LINK]に、『折紙歌合(おりがみうたあわせ) - 折り紙が詠み込まれた短歌と俳句 -』と題したエッセイを寄せ、「折り紙」、「折鶴」、「紙ヒコーキ」などが詠み込まれた歌や句を紹介した。その冒頭にも書いたように、それらの歌や句の多くは、「渉猟したわけではなく、偶然出会ったものたち」で、「もっとあるに違いない」と考えている。むろん検索して見つけたものもあり、「もっとあるに違いない」のさっそくの実例として、忘れていた言葉があったことに気づいた。「紙雛」(かみひな、かみひいな)である。季語にもなっているので、多くの句がある。

以下、歌合(うたあわせ)と言いつつ、歌ではなく俳句ばかりであるが、それらを紹介する。いまの季節と大幅に季が違うのだがしかたない。なお、紙雛と呼ばれるものがすべて折り紙に関係するか否かも後述する。

ちなみに、冒頭に『獄門島』の一文を引いたのは、同作が俳句ミステリでもあるとの理由による。

まずは、以前読んだはずなのに忘れていた以下の句である。

紙雛や時にとりての余り順 井月(せいげつ)

この句は、一読での句意の解釈が難しかったのだが、岩波文庫『井月句集』[LINK]の注釈(復本一郎さん)に、関連の句として、去来(向井去来)の「振舞や下座(しもざ)になをる去年(こぞ)の雛」があげられており、なるほどそういうことか、と納得した。つまり、年々雛人形が増えて余るということである。復本さんの注釈には「時につれての餝り順 とも」とも記される。たしかに、「餝」(「飾」の異字)は「餘(余)」と似ている。であれば、次となる。

紙雛や時につれての餝(かざ)り順 井月

雛人形で飾り順とくれば、男雛女雛の左右の順ということも連想するが、ここでは、上と同様の、複数対ある雛の飾り順と見るべきだろう。というのも、『日本人形玩具辞典』[LINK]

続きを読む

[折り紙]
[もろもろ]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット