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東京都府中市の住宅街に「ポアンカレ空間」(加藤義次 作)と名づけられた彫刻がある。以前から気になっていたが、先日、確認して写真を撮ってきた(写真左上)。プレートに示されていた作者の加藤義次氏(1927-2009)は、寡聞にして知らなかったが、WEBで検索すると、幾何学的な彫刻作品を多数つくってきた彫刻家である。
向きづけされた閉じた連結空間(二次元でいえば、球やトーラスの表面)はすべてポアンカレ空間になる(はずな)ので、この命名と造形の意図はよくわからないが、そのかたちは、8個の立方体からなる四次元超立方体(正八胞体)の三次元投影にヒントを得たものと思われる。ただ、超立方体の三次元投影モデルということであれば、中央の立方体の穴の意味するところは不明である。
不明ではあるけれど、面白さはある。この穴は内部で境界をもっていて、円柱のパイプが、中央で連結するかたちになっている(図右上)。つまり、この彫刻の表面を二次元多様体として見ると、種数5の向き付けられた閉曲面(五重トーラス)になる。直感的には、穴の数は6個になるようにも思えるが、図右中のように、中央から6つに分岐する穴の数(種数)は5になる。
ここで思い浮かんだのが、ウニの一種であるスカシカシパン(図左下)である。スカシカシパンはひらべったいウニで、5個のスリット状の穴があいている。糸穴が五つあるボタンのようなものである。スベスベマンジュウガニと並んで変な名前をもった海の生き物の筆頭だ。
この彫刻は、二次元多様体として見ると、スカシカシパンと同相と言えるのでは、と思ったわけである。しかし、さらに調べてみると、排泄も口から行うイソギンチャク(球面と同相)と違って、ウニの消化器官は入口と出口があり、スカシカシパンの場合は、裏面中央の口と半径半分ぐらいのところにある肛門をつなぐ穴があるのだった(図右下)。すなわち、スカシカシパンは六重トーラスであった。
ちなみに、スカシカシパンの分類は、「タコノマクラ目カシパン亜目スカシカシパン科」で、それだけでも笑えるものだ。なにものなんだよおまえ、と。
なお、WEBでスカシカシパンを検索したら、2008年に、中川翔子さんのプロデュースでスカシカシパンをかたどった菓子パンが売り出されていたということを知った。スカシカシパンマンなるキャラクターまであったらしい。知らなかった。しょこたん、やるな。
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