先週末は、なぜか本の装幀に縁があった日々だった。
まずは土曜日。
和算の本などを探しに行った高円寺の西部古書会館の古書市で、『とにかく、吉行淳之介。』という本を妻が見つけた。一目見るなり、叔父の前川直の装幀とわかる本である。しかし、この本は知らなかった。挿絵も多いので「見ごたえ」もある。
叔父の装幀に雰囲気が近いものに、野中ユリさんの仕事がある。野中さんの装幀は、たしか、中公文庫の『僧正殺人事件』で知ったが、武田百合子さんの『ことばの食卓』は、挿画も多く、多面体も描かれていてすばらしい。
叔父はかなり多くの本を手がけているので、古書店での出会いの確率はけっこう高い。以前叔父の書庫で見たときは、こんなにたくさんあるのかと驚いた。買わない作家もいるけれど…。ちなみに、吉行さんも、エッセイを数篇読んだことがあるが、小説はたぶん一篇も読んでいない。いっぽうで、二十歳前後のわたしがブンガクセーネンとなったのも、叔父が間接的に影響している。我が家に叔父が装幀した新潮世界文学全48巻があったためである。文学全集というのは一巻一作家であることが多いが、これはドストエフスキーだけで六巻あるというものだった。わたしはそれに読みはまった。
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そして、日曜日にも装幀に関することがあった。
映画を観て帰宅すると、東秀明さんから一冊の本が届いていた。「折り紙関連資料のひとつに…」といった一文だけが添えられた『El Aleph』という本である。表紙の写真はたしかに東さんの作品で、裏表紙にも「Fotografia なんとかかんとか Hideaki Azuma」とある。しかし、スペイン語なのでなんの本なのかすぐにはわからなかった。
折り紙の数学の研究者である東さんのこと、アレフというのはカントールの無限の濃度のこと? しかし、数学の本にしては数式がないなあ、著者のJorge Luis Borgesってジョージ、ルイス、ボージス? いや、スペインなら、ホルゲ? などと悩んだあと、「ホルヘ・ルイス・ボルヘスだ!」と気づいた。ラテンアメリカ文学の巨匠である。かつてのブンガクセーネンとしては、ボルヘスの装幀に作品が使われるなんて、めちゃくちゃうらやましいぞ、東さん。
夜、『El Aleph』が載っていた集英社世界文学の一巻が本棚にあるはずと探した。しかし、見つからなかった。すくなくとも『汚辱の世界史』を買って読んだ記憶があるのに、『ブロディーの報告書』と『幻獣辞典』の2冊のみを発掘した。我が家の書庫も、蔵書検索が困難な「魔窟」化しつつある。
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