アンティキテラの機械
2009-10-03


『アンティキテラ - 古代ギリシアのコンピュータ』(ジョー・マーチャント著 木村博江訳)を読み了えた。
 いまから約100年前、ギリシア・アンティキテラ島の沿岸、2000年前の沈没船の中で、いわゆる「オーパーツ(場違いな遺物)」が発見された。青銅製の精巧な歯車を組み合わせたその機械は、1000年以上時代を先んじているとしか思えず、あまりにも謎めいていたため、深く研究もされず、博物館の倉庫に眠っている時間が長かった。しかし、近年になって、想像していた以上の驚くべき機能を持っていたことが判明した。
 というわけで、その遺物の研究の歴史を記したノンフィクションがこの本だ。
 興味深かったのは、まず、この機械の具体的な機構だった(なんとなく仕事に関係しているので)。そして、この機械のルーツにアルキメデスが関係しているらしいということに驚いた。どんだけ天才なんだよ、アルキメデスさん。
 さらに、古代ギリシア文明の重要な部分が、ローマ・ヨーロッパ世界には直接継承されず、アラブ・イスラム世界に継承されたという記述に、深く頷いた。オーパーツだと騒ぐのもヨーロッパ視点ゆえのことだと言える。イスラムは、古代ギリシア文明のみならず、インド文明も吸収し、ルネサンスへの架橋となった。このあたりの話を概観するには、『地中海世界のイスラム - ヨーロッパとの出会い』(ウィリアム・モンゴメリ・ワット著 三木亘訳)という本がわかりやすかった。
 人間ドラマとしては、Ph.D.を持たない学芸員・マイケル・ライトの奮闘の物語にこころが動いた。
 とまあ、以上にように、これは読みどころ満載の本なのであった。
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